地域に根差す医科・歯科クリニックにとって、採用は経営そのものです。
「応募がなかなか来ない」「求職者とのミスマッチが多い」「内定辞退が続いている」「入社しても早期離職してしまう」こうした悩みには、必ず原因があります。
本記事では、採用の土台づくりから求人票・選考設計・定着、さらに求職者が実際に何を望んでいるのか、求職者がクリニックを見極める際の視点まで、具体策に落として解説します。
ぜひ参考までに、最後までご一読ください!
【採用は「露出」×「選考と受け入れの質」】

応募数を増やす為には、「露出」が必要となりますが、内定率や定着率を高めるのは、「選考と受け入れの質」です。
求人を各媒体による露出だけで解決しようとすると、単発的に応募は増えても辞退や早期離職が増え、さらに採用コストが上がってしまいます。
逆に、クリニックの魅力を言語化し、候補者体験を設計できていれば、必要以上の露出に頼らず、質の高い採用が可能となります。
それでは、今から「医科・歯科クリニックの求人成功12原則」について説明していきます。
これは、求人を行う際にとても必要な要素となりますので、是非ご確認ください。
【医科・歯科クリニックの求人成功12原則】

■原則1:採用ペルソナの明確化
採用のペルソナとは、採用したい理想の人材像を「年齢、性別、学歴、職歴、価値観、ライフスタイル」など、より詳細に具体的に設定したものを指します。
ペルソナを明確にすることで、採用基準が明確になり、選考のミスマッチを防ぐことができます。
<イメージ>
◆看護師:外来看護の経験・採血/処置の頻度に抵抗がないかどうか、患者説明が得意かどうか、電子カルテに慣れているかどうかなどを明確に設定する。
◆歯科衛生士:予防中心か、治療補助中心か、担当制の有無などを明確に設定する。
【ペルソナ要素】
経験年数、スキルセット、価値観(予防重視・チーム医療志向)、働き方(時短/フル)、希望シフト、通勤手段などの要素を使用し、採用したい人物像を明確にする。
■原則2:選ばれる理由を言語化する
以下に記載している5つの項目を参考に、「なぜ自院が選ばれているのか」を言語化し、言語化したものを求人に記載する。
◆教育:研修制度、教育制度、メンター制、学会・研修費支援、評価制度
◆働きやすさ:残業平均、休憩の実態、シフトの柔軟性、有給取得率、産休育休取得率、福利厚生
◆成長:評価制度や昇給ルールに沿った昇給システム、資格取得に対する手当、勉強会支援
◆仕事:予約や問診のDX化、職場環境の整備、機器など設備環境の充実性
◆環境:心理的安全性、ハラスメント防止、情報共有の仕組み(朝礼/週報/面談)
■原則3:募集要項には「透明性」と「数字」を記載
◆必ず数値で書く:基本給と各手当の内訳、想定年収レンジ、残業の平均時間、有給取得率、離職率、産休育休取得率など、出せる範囲で記載する。
◆1日の流れ、担当患者数/ユニット数、記録方法(紙/電子)、教育時間の確保状況などは、具体化した上で記載する。
◆院長先生の写真、スタッフ写真(許諾必須)、院内写真を掲載することで、どのようなクリニックなのかイメージを持たせる工夫が必要である。
■原則4:返信スピードと選考の短期化
◆応募返信は、必ず24時間以内に行う。
◆オンラインによる面接ができるよう、面接方法の幅を広げる。
◆待たせるほど辞退率が上がるため、内定までは最長7〜10日を目標に設定する。
■原則5:クリニックの見学体験を導入する
◆15〜30分の短時間見学でも、先生やスタッフなどクリニックの雰囲気が伝わる。
◆候補者が「働く自分」を想像できるよう、1日の流れ、役割分担、記録・引継ぎなどを実際に見せる。
■原則6:教育スキームやOJTの内容を求人に公開
◆研修期間の業務内容や教育スキームなどを、簡潔に求人に記載する。そうすることで、入社前に「学ぶ道筋」が分かるため、入社前の不安を軽減することができる。
■原則7:業務の分業化とDX化で効率化をアピール
◆医科:WEB問診、WEB予約、受付番号の自動化、支払のキャッシュレス化など。
◆歯科:口腔内スキャナの導入、滅菌フローの可視化、セレックの導入など。
◆「忙しさの質」を改善し、“消耗する忙しさ”を減らすことで、応募数は飛躍的に上がる。
■原則8:柔軟な勤務設計
◆時短勤務・週3〜4勤務・土日いずれか出勤など、勤務時間に関しては正確に記載する。
◆育児・介護と両立できる体制は応募層を広げることができる。
◆産休・育休後に復帰されるスタッフへの”復帰プラン”も設計すると、応募数は上がり離職率は下がる。
■原則9:評価・昇給のルールの明確化と見える化
◆評価制度の構築と給与の見える化など、自院で仕組み化づくりができていることを求人で記載する。
◆面談は試用期間中は月1、その後は半期に1回実施している事を求人に記載する。
■原則10:コンプライアンスの明示
◆ハラスメント防止対策、個人情報保護、インシデント共有のルールなど、自院でどのように取り組んでいるかを求人に記載する。
■原則11:各求人媒体に対する求人内容の統一化
◆自院のホームページ・各求人媒体・SNS・院内掲示など、求人掲載している物には全て同じ言葉と数字を使い統一させる。
◆記載内容に統一感が無いと、不信感にも繋がるため要注意である。
■原則12:内定から入社までの流れを説明
◆内定~入社までの「連絡頻度、準備物、初週のスケジュール」など、内定から入社までの流れを記載する。
この「医科・歯科の求人成功12原則」は、求人募集をかける前に戦略的に行う必要があります。
ただ、求人をかけるだけでは応募数は増えませんし、求人媒体に掲載する場合は掲載するだけでコストが発生します。求人は、クリニックを経営する上で必要不可欠なものとなりますので、無駄な費用を発生させない為にも、しっかり計画的に行いましょう。
【各求人媒体別の実践戦術】

各求人媒体によって、アピールするポイントも違えば、記載するボリュームも違ってきます。
以下に、自院ホームページからSNS発信まで求人媒体別に記載しておりますので、是非ご参考ください。
①自院HPの採用ページ
自院のホームページに掲載している求人ページには、求人媒体よりも詳しい情報(クリニックの雰囲気・教育スキーム・写真・1日の流れ・FAQ)を集約し、応募フォームは必ずスマホ最適化しましょう。
自院のホームページで掲載する場合は、求人サイトと違い制限もなく、ボリュームも最大限記載できるので、出来るだけ詳しく記載しましょう!
②紹介制度
在籍しているスタッフ経由の紹介は、定着率が高いためとても有効です。また、紹介手当を支給するタイミングとしては、「入職時/3か月後/6か月後」など分かりやすく明記することが大事です。
③学校などの施設との連携
実習の受け入れ、見学会、就職ガイダンスへの参加などを行うことで、継続的にスタッフを確保することができます。また、自院を知ってもらえるチャンスでもあるので、可能であれば積極的に行うことをお勧めします。しかし、新卒採用は中途採用と違い一から教える必要があるので、教育できるクリニック環境を作っておくことは必須となります。
④SNS発信
各SNSの投稿を行う際、診療風景や先生のお写真だけでなく“働く環境”を可視化することが大事です。スタッフの顔が写らなくても、働いている雰囲気が伝わるような投稿はとても効果的です。
⑤各求人サイト
「indeed」「ジョブメドレー」「とらばーゆ」「マイナビ」「グッピー」など、求人サイトは数多く存在します。各求人サイトにより、特徴・制限・費用・登録者数なども異なりますので、しっかり特徴を把握した上で選定する必要があります。
【求職者の本音「知りたいこと」について】

【求職者が求めているポイント】
- 給与の内訳と想定年収(賞与の算定基準・支給実績)
- 残業の実態(繁忙期の目安、残業代の扱い、分単位か)
- 休憩の取りやすさ(交代体制、昼休みの確保)
- 先生の雰囲気(言葉づかい、態度、距離感)
- スタッフの雰囲気(言葉づかい、態度、距離感)
- 教育体制(メンターの有無、OJTの期間、教育スキーム)
- 評価・昇給のルール(評価基準、昇給基準、面談頻度)
- シフトの柔軟性(固定/希望制、土日祝の扱い方、時短勤務)
- 設備・導線(清潔感、設備環境、DX化の度合い)
- 患者層と診療スタイル(小児多め/自費多め/高齢者中心 等)
- 通勤・立地(駐輪場や駐車場の有無、最寄り駅からの動線)
【職種別の重視ポイント】
- 看護師(外来):処置内容の幅・頻度、急患時の動き方、記録方法、教育時間、ドクターとの距離感など。
- 医療事務/受付:レセ・算定業務の分担、クレーム対応フロー、キャッシュレス率、締め作業の負荷、電話本数など。
- 歯科衛生士:予防中心か、1枠の時間配分、拡大鏡・器材支給、SRPやメンテナンスの時間確保、ユニット数と衛生士数のバランスなど。
- 歯科助手/受付:器具準備の標準化、滅菌・消毒の手順と設備、院内マニュアルの整備度、教育担当者の明確化など。
求職者は、上記の様なポイントを主にチェックしています。また、求職者は様々なクリニックを見比べてから最終的に応募先を選んでいます。
少しでも多くの方に自院を選んで頂けるよう、上記のポイントはぜひ抑えておきましょう!
【求職者がクリニックを見極めるチェックポイント】

求職者を確保しミスマッチしない為にも、求職者がクリニックを見極めるポイントを、クリニック側は先回りして求人に公開することが大事です。その為にも、以下「見極めポイント」を是非ご確認ください。
院内の動線はスムーズか
先生やスタッフなどクリニックの雰囲気
スタッフ同士の声かけが丁寧か
休憩スペースの清潔さと広さ
更衣・ロッカーの使いやすさ
カルテは電子化され、記録時間は十分あるか
朝礼・終礼・情報共有の形(口頭/チャット)
新人の同行期間/メンターの有無
残業発生時の申請と支払いのルール
予約変更・クレーム時の対応やトークスクリプトの準備があるか
診療方針の説明の一貫性(院長とスタッフの言葉が一致しているか)
患者説明の時間とツールは確保しているか
清掃・環境整備の基準と担当
医科:外来ピーク時の呼び出し/導線の工夫
歯科:ユニット間の動線、器材配置の合理性
感染対策の掲示(手指衛生、個防具)
教育の時間がスケジュールに組み込まれているか
診療以外の雑務の分担(発注、在庫、SNS、採用など)
面談の頻度と評価方法が決まっているか
有給の取得実績(直近1年の平均日数)
産休・育休の復帰パターン(時短、シフト配慮など)
シフトの作成サイクルと希望申請の締切
研修/学会の補助の上限と対象
機器トラブル時のサポート体制
夜間・休日の連絡ルールに関しての決まり事
電話の本数や役割分担(一次受け/折り返し)
院内ミーティングの頻度と議事録の有無
スタッフの平均勤続年数
試用期間の評価基準(いつ、誰が、何で判断するか)
直近1年での離職理由の傾向
【ありがちな失敗と“すぐ直せる”改善例】
【失敗例①】
給与レンジが広すぎ、上限だけを強調した募集要項。
<改善>
内訳と想定モデル年収(例:経験3年・フルタイム・残業10h/月)を併記。
【失敗例②】
残業「あり・なし」のみの表記で曖昧な表現。
<改善>
「平均○時間/月、繁忙期は○時間、残業代は1分単位」など、具体的に記載。
【失敗例③】
写真が人物の顔アップのみの掲載。
<改善>
診療室、待合、休憩室、機材などの設備、スタッフの雰囲気など、働く場面をイメージさせた撮影。
【失敗例④】
応募〜面接の日程調整が遅い。
<改善>
自動日程ツール/カレンダーで候補日3つを即時提示した仕組み作り。
【失敗例⑤】
教育は「丁寧に教えます」の一言のみしか記載がない。
<改善>
検収プランやチェックリストなど教育スキームを可能な範囲で公開。
募集要項に掲載する内容により、応募数は大幅に変わります。
よくあるテンプレートの内容をそのまま利用して求人をかけても、応募数はあまり伸びません。
自院を選択してもらえるように、できるだけ可能な限りオープンに掲載することが大事です。
また、ミスマッチを防ぐ為にも、どのような人を採用したいのかターゲット層を明確に設定した上で求人募集をかけるようにしましょう。
【まとめ】

今回は「医科・歯科クリニックの求人が”成功する12の原則”と求職者の本音と見極めポイント」について、お話しさせて頂きました。
募集要項で掲載する際は、給与や休みを“盛る”より、数字で表現したり求職者目線で記載すると、医科・歯科クリニックの採用力を底上げできます!
求職者は、「仕事内容のリアル・教育の実態・人間関係の安心感・先生やスタッフの雰囲気・成長機会」を主に見ています。クリニック側は、このような求職者目線を意識した上で公開し、応募から研修期間(3ヵ月)までを、分かりやすく掲載し、求職者が「入社した自分をイメージ」できるようにさせる工夫も必要となります。
求人に関して気になる事や、相談したい事などございましたら、大阪市北区梅田にあるクリニック経営コンサルティング会社『Calf J(カーフジェイ)』まで、お気軽にご相談ください。
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■ 会社:Calf J (カーフジェイ)
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